|
合気道は、大人の他に、子どもも稽古している道場がたくさんある。子どもが合気道を稽古する意味はどこにあるのだろうか。
演武会等で子どもの様子を見ていると、会場の通路を走り回ったり、大声を出したりしているのを時々見かける。このような様子を見ると、この道場の指導者は、何を考えて子どもたちを指導しているのかと考えてしまう。単に「躾が悪い」だけでなく、「合気道的に」考えてどうかということである。
新明解国語辞典(三省堂)では、合気道を「攻撃を加えて来る相手の動きを察知し、事前に徒手でそれを押さえる護身術」と説明している。通路を走り回ったり、大声を出したりしていては、自分の周囲の危険を察知することはできないだろう。技を教えるだけでなく、「危険に近づかない」「いつも自分の周囲に注意を払う」「他人に攻撃されない位置、間合いを常に意識する」などを教えることが必要だろう。例えば、「他人の前を横切らないこと」も、単に「礼儀」だけではなく、「自分が攻撃される可能性を減らす」「攻撃されない位置取りを心がける」という意味があるのだと教える方が「合気道的」だと思う。子どもの時に、このような意識・姿勢が身につけば、一生役に立つのではないか。
ついでに、前職の経験から言うと、劇場やホール等で演武会等の催し物を開催する際は、消防署に「緊急時の対応」についての書類を提出することになる。観客はどのような経路で避難するのか、避難誘導のスタッフはどのように配置するのかなどを書類で提出する。
演武会等の催し物は、このような準備を経て実施されるので、会場内を走り回ったり、通路を塞いだりするのは、自分だけでなく他人の安全を脅かす行為である。このように子どもに教えることが「合気道的な」指導だと思う。そのためには、指導者自身が合気道について「深く」考えて、自らの安全意識を高める努力をしていかなければならないと思う。
|
|